考察 6QB2

 やはり録音したものを聴いていて好きだなと思ったので、今回は6QB2について感じたことや思ったことを書いていきたいと思います。
 6QB2はそれまでのC系やP代のキュービックに使われた6QA2のストロークを拡大によって改良を施したエンジンです。さらに言えば、6QA2はBU系で用いられたD920Hを改良してできたエンジンです。
 D920Hエンジンが搭載されたBU-DやCJは、いすゞサウンドの代名詞として知られたバスです。6QB2はその流れを汲むエンジンと言えます。
 しかし、いすゞサウンドの代名詞とされる6QA2でも、C系のものと、キュービックのものでは、大きくその音を異にします。これは、キュービックに改良された際、ギア比が変わったためと思われます。同じエンジンでもODとDDでは、そのサウンドが大きく異なることは周知の通りです。
 さて、6QB2は具体的にどのようなスペックだったのでしょうか。私が所有する『絶版車カタログ シリーズ07【いすゞ・キュービック&エルガ】』(グラフィス出版・発行人 田中浩佳)によると、

  • 種類 水冷4サイクル直接噴射式
  • シリンダー数-内径・行程(mm) 直6-125×160
  • 総排気量(cc) 11,781
  • 圧縮比 17.0
  • 最高出力(ps/rpm) 220/2,250
  • 最大トルク(kg・m/rpm) 75/1,400
となっています。なお、OHVです。6QA2と比較して異なる点は、最大出力、最大トルク、そして、内径・行程と圧縮比です。6QA2では、行程が150mmとなっており、圧縮比も16.0となっています。
 ストロークはさておき、圧縮比が異なるというのは非常に興味深い点で、ディーゼルエンジンは、副燃焼室式の方が圧縮比が高く、直接噴射式は圧縮比が高くなる傾向にあります。また、通常、圧縮比は高い方がよいとされていますが、ディーゼルエンジンレベルの圧縮比となると、その高すぎる圧縮比ゆえ、抵抗が増し、また、圧縮しきる前に燃えてしまうのを防ぐために燃料噴射タイミングを遅らせる結果、出力がスポイルされる傾向にあります。現に、今のディーゼルエンジンはターボチャージャー付ということもありますが、圧縮比が低く設定されています。その点、素人目には6QA2の圧縮比の方がよく思えるのです。なぜ改良型の6QB2の方が、圧縮比が高いのか。それは技術的不可能を抱えていたからなのか、それとも圧縮比が高い方が性能的優位があったのか、調査したいところです。ちなみに8PE1は圧縮比18.0、6HK1-TCCは16.8となっています。排気量が大きくなると、圧縮比が上がる傾向にあるのでしょうか。しかし、そうすると6QA2の圧縮比が説明できないことになりますが。
 さて、上記のように、6QA2を改良してできた6QB2ですが、エンジン音としては、C系の6QA2とキュービックの6QA2の中間のサウンドを奏でます。イメージとしては、C系の唸りにキュービックのディーゼルらしさを混ぜたサウンドです。また、この傾向はODに顕著です。一方DDでは、6QA2よりもD920Hに近い印象を受けます。ただ、やはり同じエンジンですので、3速の高回転域では甘美という形容詞に相応しい音を鳴らします。フィンガーシフトのバスとロッドシフトでも差がでますね。ロッドシフトはとろっととろけるようなまろやかなサウンドを奏でます。フィンガーシフトはジャリっとした音を出します。
 僕の好みはODのフィンガーシフトです。これは、地元を走っていたバスがODかつフィンガーシフトだったからでしょう。ロッドシフトの音も、それはそれで好みだったりします。一方、DDはやはりなじめません。恐らく、3速での、あの狂おしいまでのいすゞサウンドを実感できる唸りが無いからでしょう。劇的要素に欠ける気がします。いすゞサウンドとは、2速の甘さと荒々しさが混じったサウンドからの3速での甘さを極めた音へと変化する、このドラマチックな展開だと私は考えます。その点、C系の6QA2はすばらしいまでのドラマ性を秘めています。6QB2もそれに準ずるレベルのドラマ性があると思います。
 こうして文書として、6QB2に関して書いていきましたが、やはり、6QB2はいい音だったなと思います。現在、U規制のバスは着実に減ってきております。時間があるうちに再び乗りたいところです。

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