考察 M10U

 今回は、日野自動車のエンジン、M10Uについて、感じたことや思ったことを書いていきたいと思います。
 私がM10Uの音を頻繁に聞いていたのは、幼少期でした。6QB2とはまた違った、高音域の気持ちいい音を響かせたエンジンを好きだったことを覚えています。それと同時に、いすゞのフィンガーシフトと異なる、強烈なエア音を好んでいました。いすゞにも言えることですが、M10UでODのものは、3速で非常に特徴的な音を鳴らしていました。唸るようなサウンドをするのです。軽快な音とそこから唸るを重みのある音が程よく混じっており、素晴らしいハーモニーを奏でます。
 M10Uは日野・ブルーリボンに搭載されたエンジンで、1985年から2000年まで搭載されました。日野は、それ以前にRT/RUシリーズを発表しており、そこで採用されたエンジンがEM100でした。日野の路線バス初のスケルトンボディを採用したこのバスは、エンジンにおいても様々な改良が施されていました。まず、EM100の特徴として、排気量が小さいことが挙げられます。日野は、エンジンの排気量を小さくすることで燃費を改善しようと考えました。しかし、重い大型バスを動かすのに見合わない出力は、高回転域の多用をもたらしました。その結果、乗務員の評判も芳しくないものでした。また、日野では、従来水平に搭載していたところを、垂直にした搭載しました。これは、トラックと共通の構造にするためのものでした。しかし、結果として、デッドスペースを大きくしてしまい、座席の減少をもたらしました。
 上記のように不評であった、RT/RUシリーズの後継として登場したのが、HT/HUシリーズでした。見た目は、RT/RUと比べて大きな変化はなく、後部の多少の改良にとどまりました。しかし、エンジンを排気量増大させたM10Uエンジンを水平で搭載しました。しかし、それでも非力だったようです。
 運転士にとって改良されたバスが非力だったことは不幸ですが、私としては幸運だったのかもしれません。非力ゆえに、アクセルを踏み込み、かつ高回転域を多用する確率が増えるからです。
 M10Uの高回転域の音は、快感の一言。中型のようにガラガラと機械っぽい、悪く言えば下品な音を立てることはなく、大型らしいしっとりとした低音を含む高い音を奏でます。これは、M10Uの大型車用エンジンと中型車用エンジンの中間に位置する排気量であったことが関係していると思われます。
 ODだとこれまた劇的になり、3速では、2速の延長線上の音を鳴らしながら唸りが加わります。また、日野の場合4速でも高音が持続します。ずっと気持ち良い音が続くわけです。
 M10Uの最大の利点は、長期利用されていたことです。いすゞであれば、大抵5,6年で何らかの改良を加えます。それはエンジンそのものかもしれませんし、ギア比かもしれません。しかし、そのいずれかを変更してしまうと音が大きく変わってしまします。事実、同じ6QA2でも、CのものとLVのものでは大きく音が異なります。日野は1985年から2000年までの15年間、快音を鳴らす車両を販売し続けました。これはとてもすばらしいことなのです。
 ファンの多いM10U。元来日野は重めの音を出すメーカーでしたが、EM100とM10Uは例外的に低い音を奏でます。この特殊なエンジン音をまた聞いてみたいものです。

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